今後を見据えた支援・ケア

神経難病の経過

神経難病のケア

障害の特性・症状の理解

●進行性核上性麻痺 

前頭葉や脳幹の障害。症状はパーキンソン病に似ている。

脳幹、前頭葉、錐体外路系の障害でパーキンソン様症状、易転倒、眼球運動障害、頸部後屈、高次機能障害などが発現します。

●パーキンソン病

錐体外路の障害。

パーキンソニズムなどが出現します。錐体外路系の障害により「安静時振戦」「筋固縮」「無動・寡動」「姿勢反射障害」が発現します。発症年齢は50~60歳が多い。薬物療法とリハビリにより症状の軽減が可能です。

 

●筋萎縮性側索硬化症

随意運動系の障害。

呼吸機能が早期に奪われる。

随意運動系が障害され、とくに呼吸機能が早期に障害される。40~60歳での発症が多いです。栄養管理とTPPVの発達により、現在は10年以上の生存が可能です。

 

●脊髄小脳変性症

原因遺伝子で異なるが、小脳失調で転びやすい。脊髄や小脳の変性による失調症状を中心とする疾患群で、原因遺伝子より多彩な症状があります。発症頻度は10万人に約10人で遺伝性が30%、非遺伝性が70%です。

 

●多系統萎縮症

小脳や錐体外路系の障害。脊髄小脳変性症のひとつ。

運動障害、構音・嚥下障害、不随意運動、呼吸障害、認知障害などが起こる。

発症後2年以内には起立性低血圧、体温調整障害、夜間多尿などの自律神経症状もでてきます。

 

●大脳皮質基底核変性症

大脳皮質と錐体外路系、運動の左右差が特徴です。

大脳皮質や錐体外路系の障害により、運動障害や筋強剛、失行、無動などの症状があらわれる。顕著な左右差が認められるのが特徴。発症年代は60歳代。

ALSの進行例から

Ⅰ運動障害(進行性の筋力低下)

四肢の筋肉が麻痺し、萎縮する。症状に応じたADL(日常生活動作)介助、拘縮予防のためリハビリテーションが必要。

◎意思決定支援

今後発現する嚥下障害・構音障害、呼吸障害などに対してご本人がどのような医療を望むか

◎医療処置&ケア

移動・移乗・寝返り介助・食事・排泄・清潔ケア介助・拘縮予防のリハビリなど

 

嚥下障害(球麻痺※脳の延髄によっておこる麻痺)

舌やのどの筋肉が弱くなり、食べ物や飲み物、唾液を飲み込みにくくなる。むせやすくなり、誤嚥性肺炎のリスクが高まる。誤嚥性肺炎を頻発する場合は経管栄養法を検討する。

◎意思決定支援

胃瘻の造設、中心静脈栄養の導入(特に誤嚥性肺炎発症時)など

◎医療処置&ケア

嚥下食の利用

低栄養状態、脱水の予防

 

Ⅲコミュニケーション障害(構音障害)

声が出しにくくなり、言葉での意思伝達が困難になる。瞬目の回数や視線の移動などでyes.noを表したり介護者が50音を読み上げる口文字や文字盤などで意思伝達をする。

◎意思決定支援

スピーチカニューレの使用

スピーキングバルブの使用(気管切開している場合)

 

◎医療処置&ケア

新たなコミュニケーション法の練習

唾液・痰の吸引

口腔ケア

TRQO4925

いつか起きる障害に向けて

いつか起きる障害に向けて。

神経難病は段階的に障害が進行していきます。先の経過を見通しながら、医療処置を検討していく必要があります。

たとえば嚥下障害がひどくなったら胃瘻をつくるかどうか、肺炎を繰り返すなら気管切開をするかどうかなど、ひとつひとつに意思決定が必要です。看護師は医師の説明を補足しながら医療処置のメリットとデメリットをよく説明します。

意思決定が療養者本人のものであることを大切にし、人工呼吸器をつけると決めたなら、その後人工呼吸器をつけた人生が長く続いていきます。

本人ではなく、家族が意思決定を担ってしまうとのちに家族がつらい思いをすることにもなりかねません💦

 

療養者と家族で何度も話し合い、共有することが大切です。

 

神経難病が進行すると言葉によるコミュニケーションが難しくなるため、何らかのコミュニケーションツールが不可欠です。

たとえば手指や眼球の動き、施設で入力する意思伝達装置や文字盤や口文字といった対面のコミュニケーション方法が代表的です。

最近は遠隔操作が可能なコミュニケーション支援ロボットも登場しています。

療養者に合わせたコミュニケーションの習得が重要となります。

 

療養者さんに合わせて苦痛が少しでも軽減されるよう支援させていただきます、お気軽にご相談ください🍒